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2011年7月25日月曜日

作った時の事は忘れました

夕立ち

夕立ちが降ってきた
汗線のたくさんある
乾いたアスファルトは
救いの手を差し延べるのだ
そのグロテスクで
カサカサの皮膚は
水にうるえて黒くなる
灰から黒になる
満足して
湯気が立ち
アスファルトは熱気にあふれる
そのうちに全てが黒になる
汗線のボツボツは水にうるえる
しっとりとした肌ざわりになる
そのうちに毛が生えてくる
だんだん生えてくる
どんどん生えてくる
歩道も車道も毛で埋まる
どんどんのびる
ますますのびる
人の足にからみつき

タイヤを溶かす
そして分裂を開始する
街中毛で埋まった
真黒になった
そして毛と毛がからみ合い
ニョキニョキニョキと天にむかう
ニョキニョキニョキ
ニョキニョキニョキ
毛はときどき風で振り乱れた
もう木々の緑さえなく
毛は灰と緑さえも食べてしまった
アスファルトの汗線から
毛はスーッ スーッとのびる
下界は蒸せる暑さ
毛は海面に浮かび
山の木々を食べ
都市を奪った

この熱気

夕立はまだやまない

2011年7月23日土曜日

夏の青山通りで書いたかな?

夕立ち

ドロドロとした
アスファルトの膚は
カサカサに乾き
ほこりが舞い立ち
汗線のジワジワした穴だらけだ
穴からはヒーヒーという苦しげな声
のどがカラカラであるらしい

そこへ
大粒の雨が降ってきた
瀕死の膚は
その汗線から救いの手を差し延べる
穴からはたくさんの手が出てくる
それは
もがき
うるおい
からみ合い
揺れている


「アアッー!」

そのグロテスクな膚は
ブツブツ煮えている
グチグチ
ブツブツ
乾いた灰色は消え
黒い両生類の粘膜で覆われる
グチグチ
ブツブツ
手は引き込み
毛が延びてくる
毛はユラユラと揺れる
毛穴からは蒸気が出てくる
その蒸気で、毛もまた揺れる
風になびくような
黒い草原になる

2011年7月21日木曜日

駿台予備校の帰り、御茶ノ水の駅でバスを待っているときに浮かびました

六月の雨上がり

雨上がりの六月
雨上がりの夕方
真っ青な空と
地表との空間を
ちぎれてきた灰色の雲が渡る

青空高く
涼しそうな赤い雲よ

敗走したちぎれ雲は
分割して
スピードを速めて
北に向っているではないか

赤い雲と
灰色の雲と
その二つの空間は空虚で広から
もう遅すぎるのでは?
しかし道には
赤と青と灰が交錯する
そんな雨上がり


とぼけて
傘を持ってバスを待つ
青と灰は程遠い
赤はさらに遠い
青い
青い
宇宙に続いている

でも、灰色の雲は私に接近している
青と灰の空間が
あまりに空虚で広いから

2011年7月20日水曜日

作った時の事は忘れました

雨ごい

自動販売機で買ったビールとコーラ
駅前で買った『たい焼』があれば
一晩は楽しい
ほろ酔いで愉快になる
ブランコで遊ぶ
シーソーで遊ぶ
ビールで少し酔ったなら
熱い『たい焼』を食べて体を暖めよう
ここは雨ごいもできるちょうどいいベッドだ
口をホクホクさせて『たい焼』を食べよう
全部食べたらコーラで心を沈めよう
よく冷えたコーラで
それこそ氷ついたコーラで
胃の中を隅から隅まで洗おう



少し休んで
全部飲んだら
ゾウリを枕にして寝よう
酔いは回り
すぐ寝つくだろう
この世をメッシュに分ける法律など気にせずに
もしも、通りの車がうるさければ
耳に栓を
明日
空が白んできたら
コーラの罐に小石を入れて
チャリンチャリンと鳴らしながら
家に帰ろう
あのスイートスイートホームへ
あとの物は捨てて
スイートスイートホームへ

父親と取っ組み合いの喧嘩をして家出した。皇居の周りを一周して、千鳥ヶ淵の公園の土管の中で一泊した。そのときの詩です。

夜の散歩

公園で木々が騒いでいる
誰かが、僕のうわさ話をしている
萎縮してしまった僕はそれが気になる
水銀灯の光で木々の話し声はさらに高くなる
昼間の強烈な太陽とは違い
夜はくつろげるのだろうか
犬を連れたパンタロン姿の少女と大人がボールで遊んでいる
犬が僕の足に鼻を近づけ、クンクンとうなる
ボールが飛び交う
平和なひととき
涙が出てくる
顔をそむける
でも僕は出発しなければならない
銀座でも新宿でも、どこへでもいこう


木々の笑い声も人の笑い声も消えた

ヘッドライトは無数
赤,白,黄の点滅
オフィス街へ直行しようよ
したたる水と
緑の泥
都市の静寂を持った水をくぐり抜けて
ネオンは輝き
ビルは三倍の影を落とす
サーチライトとレーザー
青い光
青い光が頭の中で交錯する
ホラ!
新しい人間がいただろう
ホラ!
二人の人間がいただろう
後ろから中年の女がついてくる
しだいに明るくなり


地下鉄の工事現場で
後ろの女と少しの間別れる
サーチライトの根源はここだ
昼間の明るさだ
水田の匂いを漂わせ
田舎の匂いを漂わせ
しだいに暗くなり
女がしつこく後ろからついてくる
しだいに眠くなり
心は妙に静かになる
静かだ

信号が変わる
そのたびにバイクが先頭にたつ
ハチのごとく雷鳴をとどろかせ
そのジャンプ力でもって
銀座へ突進していった
信号が赤になった
後ろの女は僕に追いつき
不吉な質問をした


「今、何時ですか?」
「九時ジャストです」
「朝日会館は何時までやっているか御存じですか?」
「いいえ」
「失礼しました」

信号が青になった
女は先に行ってしまう
和服を着ていることに今さらながら驚いた
なぜか静寂の中にいる
また、暴走族が道にあふれる
銀座の明かりは一段と輝き
ガードの上の列車の光は切れ目ない

芝生の方向で放尿の音がする
ハハーン、酔っ払いだな
角に朝日会館という文字がライトに照らされ、浮き出している


心は沈んできた
無意識に足が体を運ぶ
僕は光の中へゆく勇気がない
こんな服を着ていては
それに、その光で自分が完全に照らされ、ひからびるのを恐れる
光は恐怖だ
自分をさらけ出すのが怖い
僕は道を左にとった
深い森と高層ビルの間の道をとった
対称的な世界だ
静かだ
会話は一回きり
若者の集団と
会う人もまれで
人々は暗闇にいて、互いの姿を認められない
一人だけ外人を見た
谷間からは


列車の明かりが絶え間なくうつり
無味乾燥になる

大きな大きなビル
興奮は心の中で、完全に氷となった
冷えた体と頭
かすんだビル
うずくまる男
あせっている車の運転手
ビル工事
何億もの人間が通った橋
何百年も前の燈籠
--------
頭がクラクラし
体がよたる
フラフラ
頭痛がして
青い天をかける光が交錯する
青い光は目前にある
体がフラフラ


フーアフーア
左に曲がって
急な坂道
フーアフーア
フーアフーア
館が浮かび上がり
下のハイウェイを圧迫する
に兵士の亡霊だ!
亡霊だ!
正面にいると危険だ!
駆けろ!
駆けろ!
陸橋を早く渡れ!
逃げろ!
逃げろ!

心臓は止まらない
目は赤く染まり
ぞうりはすり切れた
一息つく暇もなかった
脈拍も止まらない


ここはどこだ
森林にかこまれた静かな所だ
また
静寂に戻る
少しの恐怖感と
少しの頭痛がする
ちょっと休んでみよう
横になると星はみえない
地面の冷たさが身にこたえ
僕の肉体も冷えてきた
星はない
土は体を冷やす
かたわらに
トラックから落ちた花がある
開店祝いの花がある
(第一ホールか…)
その巨大な造花はビニールに包まれ
露がその上をはう
造花は冷えてくる
木々が騒いでいる


冷えてくる
冷えてくる
頭は混乱したまま冷えてくる

2011年7月18日月曜日

旧国鉄のどこかの駅で書いた詩です

改札口

信号が変わった
背後から人が

列車が着いた
階段を登る人々

ワッショイ
ワッショイ

列車が着いた
信号が変わった
背後から人が
改札口を通って下のホームへ

列車が着いた
ワッショイ
ワッショイ

信号が変わった
列車は行った
閑散な改札口


切符係と知人
自動販売機に寄りかかる男
待ち人来たらず四十人
パチンコの音
マイクの警官

ワッショイ
ワッショイ

販売機のガーガーいう音
切符係が出す破裂音「パチッ」
待ち人来たらず三十九人

信号が変わった
列車が着いた
ワッショイ
ワッショイ

待ち人来たらず十二人
ワッショイ
ワッショイ


ワッショイ
ワッショイ

新宿の住友三角ビルができたとき、上って展望台で書いた詩です

 立ち止まって


雑踏の中で耳を澄ませてごらん
もっと耳を澄ませてごらん
小鳥の鳴き声が聞こえないか?
高層ビルの展望台に登ってごらん
ビル群の向こうに
田畑がかすかに見えるだろう
そこまで飛んでゆきなさい
ビルの窓から
さあ!

2011年7月17日日曜日

作った時の事は忘れました



「今日は夢を見るのです」

―枕を変えたから―

「今日は草原の夢を見るのです」

―木の葉模様の枕だから―

「草原の向こうには海。馬が駆けている」

「そして花にハチがとまるのを見て、もぐらとたわむれるのです」

「草原は永遠なのです」

暖かい光を浴びた子供の頃を想いだし
はるか昔の
ノートの表紙が


私の脳裏をかすめるのです

2011年7月16日土曜日

高校時代 毎日の通学路であった靖国神社の秋 黄色くなったいちょうの葉をテーマにしました

神社で


後から木の葉の追っ手が来る
カラカラ
クルクル
追ってくる
赤くただれた春の枯葉
カサカサ
カサカサ
僕の足はしだいに速くなる
もう木の葉を完全に引き離した

朝の神社で

突然嵐が…

さっきの木の葉は僕を追い越して行ってしまった

もうずっと先

不幸な若い木の葉よ

鳥居がビルをかんじからめにするとき
バカにしたような青空が広がり
奈良のイメージと
抜けるような青空が
そこらじゅうに散らばった

息苦しい

ふと見ると
風がやんだのか
さっきの木の葉がそこに止まっている
僕は見知らぬふりをして通りすぎる
すると、又、木の葉は僕を追いかけてきた

冬、旅行をして、列車の窓から、列車が東京に入る時作ったと思います


車窓より

雪は暗闇の下
余命はあと一日
残兵がポツリポツリ
冬はもう去る
暗闇は雪に最後のいこいを与える
ポツリポツリ
我われの光が雪に写り
コンクリートの団地が見えてしまった