木々は黙っていて
僕らに妨害を与えなかった
光るテールランプは遠く
急速に近づき
急速に遠ざかる
白いラインは輝き
道はどこまでも黒く黒く
暗い世界へと通じている
白いボディーに青いラインの入ったギャランには
女が二人と
男が三人
男がハンドルを握り
この世をはかなむ最後の人類のように
ゆるく波打つ灰色の海を軽快にゆく
軽快に
軽快に
流れ星
小さな町
信号機
満艦飾りのトラック野郎
透明な光のドライブ=イン
時速は百五十キロメートルを越え
平板な音楽で心は満ちてゆく
バート=バカラック
カーペンターズ
フィスディメンション
明日にかける橋
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不思議な音を反響させる
車はいない
対向車はいない
追い越す者もいない
僕たちだけの世界ができた
ハードトップの
魚のような窓から入る冷たい大気
そして、平板な音はそこから抜け出る
速度のある黒い風は
我われから記憶を運び去り
感覚を奪う
それが頭脳を完全に吹き飛ばした
ただ
十と一の加速度が交互に感じられるだけ
信号はない
カーブはない
踏切はない
ただ
黒いアスファルトのベトベトする道を
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