ここは開拓地なのである
人間が新しく造り出した空間なのである
出かせぎのおっつぁんが掘り出した所なのである
すでにエスカレーターは動き
人々は流れているが
すでに床は泥で満ち
テカテカに光ったステンレスと
塗料のはみだした壁には
赤く醜い錆が吹き出しているが
沈黙の中に吸い込まれてゆく気がする
ここは開拓地なのだ
暗黒に信号が点滅し
何かを暗示している
黄色く強烈な光が暗闇の中心から突進してくる
その光は迫ってはきたが
列車はこない
床にこびりついた真新しい泥は
波打って
心臓を鳴らす
光はぐんぐん迫り
悲壮な泣き声がしたとたん
この世は
繰り返される冷光で満ち
列車がしだいに呼吸をゆるめ
目前に停止している姿を見た
ガラスケースの中はもの静かだった
この開拓地には英雄はいない
ビリー=ザ=キッドも
ジョン=ウェインも
もの静かなガラスケースでいっぱいだ
ガラスケース
そんなデリケートで
あてにならないものに乗るのだ
『千葉行き』に乗ろう
列車は地面と共にうなり声を上げ
ガラスでできたその体をふるわせる
あっという間に
開拓地の光景は消えうせ
全ては都市の悲鳴を上げる
もぐるもぐる
光のないガラスケースの中へ
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