ページ

2012年3月13日火曜日

東京の地下鉄

東京地下鉄



ここは開拓地なのである

人間が新しく造り出した空間なのである

出かせぎのおっつぁんが掘り出した所なのである

すでにエスカレーターは動き

人々は流れているが

すでに床は泥で満ち

テカテカに光ったステンレスと

塗料のはみだした壁には

赤く醜い錆が吹き出しているが



沈黙の中に吸い込まれてゆく気がする

ここは開拓地なのだ



暗黒に信号が点滅し

何かを暗示している

黄色く強烈な光が暗闇の中心から突進してくる

その光は迫ってはきたが





列車はこない

床にこびりついた真新しい泥は

波打って

心臓を鳴らす



光はぐんぐん迫り

悲壮な泣き声がしたとたん

この世は

繰り返される冷光で満ち

列車がしだいに呼吸をゆるめ

目前に停止している姿を見た



ガラスケースの中はもの静かだった

この開拓地には英雄はいない

ビリー=ザ=キッドも

ジョン=ウェインも

もの静かなガラスケースでいっぱいだ



ガラスケース





そんなデリケートで

あてにならないものに乗るのだ

『千葉行き』に乗ろう



列車は地面と共にうなり声を上げ

ガラスでできたその体をふるわせる

あっという間に

開拓地の光景は消えうせ

全ては都市の悲鳴を上げる

もぐるもぐる
光のないガラスケースの中へ

0 件のコメント:

コメントを投稿