ページ

2012年2月28日火曜日

夜明け、関門トンネルを抜けると、九州だった

上陸


耳がツーンとして目が覚めた

もう、あの純粋な気持ちで

トンネルをくぐったのではない

もう、あの暖かい胸もない

もう、あの切符もない

なぜか冷え切って上陸した

貨物列車とすれ違い

街に入った

薄ぼんやりとして

冷え切った空気

もう、全ての人が東京の空気を浴び

人々はちりぢりになった

耳の奥で「あれが九州よ」と言う母親の声がして

緑の茂った陸が見えた

隣りの男がブラインドを上げたとたん

すりガラスが割れていった



「あれが門司よ」





今まで何度もあの沿線看板に出会ったことか

しかしその看板もない



六本足で骨だらけの昆虫は

黒々としていて

朝の大気にその体温を抜き取られつつあった

赤と白に塗り分けられた

ジェット煙突は

不思議にも

何も放出していなかった



そして、このメカニックな世界の

僅かな隙間に

貧相な住宅がぎっしりだ



もう何もかもなくなった

この霧のように

粉々に





石油コンビナートの無限に長いパイプは

互いにせり合い

上へ昇り

海に突入してゆく



寂しい化学工場よ!

煙突からは

弱々しく炎が

メラメラと揺れる

メラメラと-------

そして外気と同化してしまう



もう、霧で何も見えない

でも

ほら!

東京にいた知人が

ベンチに腰かけ

こっちを見ている




0 件のコメント:

コメントを投稿