人肉食い
死んだ女にセックスを求めること
殺人
そして君は頭がいい
なぜ消えた
大切なガラス玉を置いていって
幼い憧憬は
フロントガラスのように飛び散った
向こうに
あっちに
顔さえはっきりとしない
ただ三面鏡とせんべいの香りだけ
うーん、とても芳ばしい
僕の残酷な想い出は
いつもこの臭いと隣り合わせだ
「ポーン」
「ポーン」
米がはじけている
窓をあけて
下の道を見る
「おじさーん」
「屋台のおじさーん」
「昔のおじさーん」
おじさんはこちらを振り向いて
「ニコッ」と笑った
うーん、すごくいい臭い
食べたくてたまらない
「おじさーん、今、お米持っていくからねー」
急いで階段を降りた
蒸気の「ピー」という音を聞いた
それから僕は二度大きなけがを
した
天ぷら油の中に体ごと突っ込んだ
瞬間的だったのでよく覚えていない
これに関しては
もう一つ
僕は道でころんで頭を切った
豆腐屋が抱き起こしてくれ
僕は叫んだ
「痛い」
「痛い」
「助けて」
「助けて」
おふくろとおやじが
赤と青が
四階のベランダに出るのを見た
外にもよく行った
子供の頃
向こうの方に行った事がある
そこには畑があって
広い道があって
陶器屋さんがあって
赤レンガの水路があって
土管があった
ガムをかみながら
その広い道を渡った
やぶ歯科医と
へたくそな床屋があった
うどん屋で
キツネうどんを食べたとき
なぜか、しし舞の影像と重なった
後になってバスからながめた事もある
中学校があった
幼稚園の帰り
絵を掲げて帰った
まわりの人が注目してくれた
バスに揺られ
記憶にある駅でよく乗り換えた
アパートの窓から
どぶ川と
たばこ屋が見えた
川原にはまだバラックがあり
それとアパートとは土手で区切られていた
バタ屋さんと朝鮮人
水の速く流れる水門
その上の赤錆びたハンドル
細い高い
翼を広げたような
赤白に塗り分けられた電波塔
支える無数のワイヤーが
キラッと並んでいる
黒いバラックは緑の川原
電波塔は好奇心の象徴
赤錆びたハンドルは友達
日曜日には人々が憩う
その群集をパトカーがひき殺し
てゆく
今日は土手を伝って
別な広い道まで出てみた
そう、はるか向こうに
君の顔も知らないのに
君なんて全然知らないのに
正体のない気体なのに
なぜか影響する
君のアパートはまだあるよ
薄汚れたアパート
暗く陰湿に…
君に死に方は残酷だ
殺され
強姦され
肉を食べられ
でも君は幼い憧憬
半世紀前の憧憬
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